ProDX Works
2026.03.05CLUE × Senyou 共催イベント「ドローン × AI プロダクトの未来」【前編】〜社会実装への挑戦と開発の裏側〜

2026年1月、恵比寿ガーデンプレイスにて、株式会社CLUEと株式会社Senyouによる共催イベントを開催しました。
ゲストにCLUE社執行役員の柴山裕樹氏を迎え、同社の開発パートナーであるSenyouのCTOのテと代表の井上が登壇しました。
長年の信頼関係で結ばれた両社だからこそ語れる、プロダクト開発の理想と現実、そしてテクノロジーが変える未来についてのトークセッションの内容をお届けします。
(モデレーター:さしみ)
さしみ:本日のテーマは「ドローン × AI プロダクトの未来」です。柴山さんが開発をリードされている株式会社CLUE(クルー)ほど、ドローン産業において深く、先進的な取り組みをされている会社はほかにありません。まずはCLUE社の取り組みについてお話しいただけますでしょうか?
柴山: 本日はお時間をいただきありがとうございます。これからお話しする内容の前提として、まずは弊社のサービスやドローンを取り巻く現状についてお話しさせていただきます。
私たちの会社は、事業の柱として「テクノロジーを社会実装し、世の中の不を解決する」というミッションを掲げています。ここで非常に重要視しているのが「社会実装」と「不を解決する」という2つのキーワードです。これは社員全員が常に意識している共通認識です。
私たちのミッションは特定の技術に依存しない形で定義されています。その中で今、現場課題の解決に最も効果的な手段のひとつがドローンだと捉え、注力しています。
新しい技術は、検証で終わらせず、社会で「当たり前に使える状態」まで届け切って初めて価値になる。私たちはその“社会実装”にこだわっています。
中長期的には、ドローン以外の技術領域への進出も考えています。現在はドローンとAIを組み合わせた画像解析や、床下を走る点検用ロボットといったロボティクス領域にも取り組んでいます。こうした最先端のテクノロジーを、いわゆる「レガシー」と呼ばれる伝統的な産業へしっかりと社会実装し、人の手に渡していくことこそが弊社の強みであり、目指すべき姿だと考えています。
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現場と事業を支えるプロダクトの4本柱
現在、弊社では主に4つのプロダクトを展開しています。「DroneRoofer」と「RooferCloud」は、ハウスメーカーや工務店といった住宅リフォーム・点検を担う事業者様向けのサービスです。
iPadなどのタブレット端末を使い、誰でも簡単にタップ操作だけでドローンを飛ばすことができるサービスです。現場で撮影した写真をもとに、その場で報告書や見積を作成してオーナー様へお渡しできるため、点検業務のすべてが現場で完結します。
点検現場を支えるDroneRooferに対し、こちらはリフォーム事業の経営や業務全体をサポートするWebアプリケーションです。
このプロダクトのWeb開発については、まさに今回登壇されているテさんと共に、立ち上げ当初から二人三脚で作り上げてきました。
その他、より大規模な建設現場の施工管理を円滑にする「ドローン施工管理くん」や、ドローン運用のプラットフォームとなる「DroneCloud」を提供しています。
さしみ: ドローンSaaSという領域で、ここまで全方位(ハードウェアの活用からWebでの一元管理まで)に展開している企業は、ほかにはあまりないように感じるのですが、いかがでしょうか?
柴山: おっしゃる通り、これほど包括的に展開できている例は稀かもしれません。その最大の要因は、2017年の立ち上げ以来、弊社の「確固たる軸」として成長してきたDroneRooferの存在にあります。
このサービスは、実際に現場へ足を運び、職人の方々と二人三脚で、泥臭く改善を積み重ねてきたプロダクトです。その結果、業界内で深い信頼と認知をいただくことができました。
この「現場からの信頼」という強い軸足があるからこそ、点検の枠を超えた周辺サービスへもスムーズに、かつ確信を持って展開できているのだと感じています。
柴山: (映像を受けて)私たちはドローンは作っておらず、ドローン飛行や現場業務のためのプロダクトの提供と、ドローンや業務運用の伴走支援をサービスとして提供しています。機体については、DJIをはじめとする実績あるメーカーのものを採用し、必要に応じて販売までを行っています。
その上で、ドローンを業務で使い続けるためのアプリケーションや伴走支援をサブスクリプション形式で提供する、というのが基本的なビジネスモデルです。ハードウェアは導入の入り口であり、継続的な価値はプロダクトと伴走支援によって生まれる構造になっています。
さしみ: そもそも、なぜこれほどまでに「ドローン」という手段に注目されたのでしょうか?
柴山: 実は弊社は創業時からドローン事業を始めたわけではなく、当初は「アクセサリーのレンタル事業」を展開していたんです。
さしみ: アクセサリーのレンタルからドローンへ……? 業種として、これ以上ないくらい「飛び立って」いますね。
柴山: もともと代表の阿部は学生時代に航空宇宙工学科で学び、創業当初からその領域に強い関心を持っていました。ただ当時は、資金調達がそれほど活発ではなかったため、まずは事業成長率が高いコンシューマー向けのサービスを立ち上げ、それを数年で大きくして事業売却をし、その資金をもとにして航空系の事業を作ろうと考えました。そこで選んだ事業が月額定額のアクセサリーレンタルでした。最終的には事業譲渡を行い、航空産業事業へ投資いただくことになりました。いざ航空産業の軸で事業を始める2015年ごろ、海外でも産業利用が始まっていたドローン市場に行き着いたのですが、そこですぐにDroneRooferの領域を見つけていたわけではなく、ドローンでも何度か事業転換をしています。そんな折、ある業者さんから一通のメールが届いたそうです。「屋根点検の際、実際に屋根に登って転落し、大怪我をしたり寝たきりになったり、あるいは命を落とされる方が毎年出ている。これをテクノロジーで解決できないか」という、切実な相談でした。この声をきっかけに、現場の方々と二人三脚で『DroneRoofer』の開発が始まったのです。
さしみ: なるほど。現場の切実な課題が原点だったのですね。
柴山: はい。そしてもう一つの柱が「AI」です。一昨年(2024年)の10月にドローンとAIを軸にした研究所を立ち上げました。今や業界内では「ドローンを飛ばして写真を撮る」こと自体は当たり前になりつつあり、それだけでは価値が生まれにくくなっています。 そこで、撮影した写真をAIで画像解析し、屋根の傷やコンクリートのひび割れを自動検出したり、それをもとに報告書を自動作成したりといった「データの活用」に注力しています。
この研究所も、ただ「検証しました」「プレスリリースを出しました」で終わるためのものではありません。私たちはSaaSを提供する企業として、プロダクトとして現場に届け切る「社会実装」を強く意識しています。実際、本日のゲストであるテさんの知見をお借りしながら、AIによる検出機能をプロダクトに組み込み、日々進化させているところです。
体制のところでいうと、弊社では特定のプロダクトごとにチームではなく「技術領域ごと」にチームを編成しています。フロントエンドのチームにはSenyouさんに入っていただいていますし、最近ではバックエンドの領域にも染み出して対応していただいてます。この「技術領域ごと」のチームで開発を進めることにより、複数のプロダクトを横断的に見ることができ、ドローン業界に対して違和感なく使えるサービスを提供できている、これが弊社の強みとも言えますね。
さしみ: 柴山さん、ありがとうございます! ここで会場の皆さんからも感想や質問をいただきましょう。
会場参加者: ドローンによる点検は非常に興味深いです。ただ、現場レベルでは「人が直接触らないとわからないのでは?」という懸念はないのでしょうか。どこまでがドローンで可能で、どこからが人の手が必要なのか、実際の感触を伺いたいです。
柴山: ありがとうございます。現状、屋根の点検に関しては、人が触らなくてもドローンで十分に見えるレベルに達しています。 もちろん、サービス提供当初は職人の方々から「屋根材を剥がさないとわからない」といった声もありました。ですが、ビジネスサイドのメンバーが現場に同行し、「こうすれば見えますよ」と丁寧に活用方法をレクチャーすることで、徐々に信頼を得て業界に根付かせていきました。
会場参加者: ドローンはいつでもどこでも自由に飛ばせるものなのでしょうか? 法規制の現状についても気になります。
柴山: 空港周辺など一部を除けば、正しい手順さえ踏めば住宅街でも基本的には飛ばせます。 法規制については、厳しくなったというより「ちゃんとしてきた」という表現が近いですね。ルールが明確化されたことで、逆にそれを守れば安心して飛ばせる環境になってきています。 ただ、法律を守るためのアナログな書類作業が膨大になる課題もあったため、そこをシステム化して負担を減らす「DroneCloud」というサービスも提供し、一つずつ課題を解消しています。
会場参加者: 建設業界、特にゼネコンなどは保守的で「硬い」イメージがあります。法規制の壁や業界の慣習がある中で、どのように新しい技術を浸透させていくのでしょうか。
柴山: おっしゃる通りです。そのため、現場レベルで「これは使える」と実感してもらいボトムアップで広げていくアプローチと、企業の上層部や業界団体に働きかけてトップダウンで導入を進めるアプローチ、その両面が必要だと考えています。硬い業界だからこそ、両側から動かしていくことが重要ですね。
ここまで、ドローンによる社会課題の解決と、CLUEが描く未来について伺ってきました。 テクノロジーを確実に社会実装していく鍵となるのが、それを形にする「開発チーム」の存在です。
後編では、その事業成長を根底で支える「開発組織と技術」にフォーカスします。 CLUE柴山氏とSenyouテが、「理想のパートナーシップ」の在り方と、開発スピードを加速させる秘訣について語ります。 開発の裏側に迫る後編も、ぜひご覧ください。
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